一般消費者の生活の用

はじめに

 化学物質のリスクアセスメントをしなければならない物質が最終的に約2900物質まで増えます。
 また、令和6年からは化学物質管理者を選任しなければならなくなったので、改めてリスクアセスメントを取り組む会社さんもあると思います。
 リスクアセスメントについて疑問がある場合は、厚生労働省がQ&Aを出しているので、そちらを参考にされるとよいでしょう。

 リスクアセスメント対象物を業務で使用していれば実施しなければなりませんが、ラベルやSDSの交付が除外されているケースについては除外されています。それが、「一般消費者の生活の用に供されるための製品」です。

 私は文字通り、一般家庭で使う場合のことを想定していました。ですが、コロナ禍でほぼすべての職場で手指消毒に用いるアルコールも、営業車に自分で補充するウォッシャー液にも、リスクアセスメント対象物であるエタノールやメタノールが入っています。だから、スーパーや銀行でも消毒用アルコールを使用するところはリスクアセスメントをしなければならないし、化学物質管理者を置かなければならないと認識していました。
 ですが、そうなるとほぼすべての会社は化学物質管理者を選任しなければならなくなり、各地で講習会が開かれますが到底回数が足らず、受けられない会社が出てくると。なので、思い込みではなく、ちゃんと都道府県の労働局の衛生専門官さんに確認しました。

一般消費者の生活の用に供されるための製品

「『一般消費者の生活の用に供されるための製品』の意味は、限定した用途で販売されている物を指します。商品が単一の目的、用途で販売されていて、それ以外に使用することがない物です。つまり、手指消毒用のアルコール、ウォッシャー液などは、仕事、家庭に関わらず、量に関わらず、ほかの用途に使うことがないので、労働安全衛生法57条の3に基づくリスクアセスメント(実施義務)は対象外になります。」
「ですが取り扱いに際し、裸火のあるところで大量に取り扱うと火災が発生したり、多量にこぼすと気持ち悪くなることがあるので、労働安全衛生法28条の2に基づくリスクアセスメント(努力義務)を実施する必要があります。」
 以上のように、化学物質の知識のない一般の人が使っても問題がないような単一用途の製品の取り扱いについては、法57条の3のリスクアセスメントの実施や化学物質管理者の選任義務はないようです。
 ですが、法28条の2の(努力)義務はありますので、対応するようにしましょう。

(事業者の行うべき調査等)
第二十八条の二 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等(第五十七条第一項の政令で定める物及び第五十七条の二第一項に規定する通知対象物による危険性又は有害性等を除く。)を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものに係るもの以外のものについては、製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事業者に限る。
2 厚生労働大臣は、前条第一項及び第三項に定めるもののほか、前項の措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
3 厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導、援助等を行うことができる。
(第五十七条第一項の政令で定める物及び通知対象物について事業者が行うべき調査等)
第五十七条の三 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第五十七条第一項の政令で定める物及び通知対象物による危険性又は有害性等を調査しなければならない。
2 事業者は、前項の調査の結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。
3 厚生労働大臣は、第二十八条第一項及び第三項に定めるもののほか、前二項の措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
4 厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導、援助等を行うことができる。

投稿者: 管理人 ごじら

労働安全衛生コンサルタント(機械・衛生工学) 作業環境測定士から始まり、健康診断の集団検診の事業場様対応窓口を経て衛生管理者や作業主任者、化学物質リスクアセスメントの講師などをやっております。開業予定は2024年目標!

「一般消費者の生活の用」への2件のフィードバック

  1. 厚生労働省委託事業「化学物質管理無料相談窓口」テクノヒル株式会社 化学物質管理部門
    に問い合わせたところ、「一斗缶で購入しているエタノールの小分け」については、解釈が違うようです。
    ・・・問い合わせ内容・・・
    倉庫業等;事業所にて使用する消毒用エタノール(SDSあり)を一斗缶単位で購入。
    小分けにして使用している。化学物質として使用しているのは、消毒用エタノールのみ。 化学物質管理責任者の選任は必要か?
    ・・回答・・・
    まず一斗缶で購入しているエタノールですが、これを別容器に小分けして従業員の手指消毒といった業務目的として使用している以上、リスクアセスメント対象物と考えるべきと思われます。
    これは下記URL 基発0224第1号における記載によります:
    家庭用品品質表示法(昭和37年法律第104号)に基づく表示がなされている製品、その他一般消費者が家庭等において私的に使用することを目的として製造又は輸入された製品。いわゆる業務用洗剤等の業務に使用することが想定されている製品は、一般消費者も入手可能な方法で譲渡又は提供されているものであっても、「主として一般消費者の生活の用に供するためのもの」、「主として一般消費者の用に供される製品」には該当しないこと。
    https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000987101.pdf
    そして化学物質管理者の選任については、リスクアセスメント対象物を製造あるいは取り扱う事業場に対して求められますが、下記URL:厚労省のQ&Aの2-1-4に「小分け・破砕は「取り扱い」に該当」との記載があります:
    https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001092416.pdf
    よって取り扱い事業場として化学物質管理者の選任が必要ということになります。
    ・・・
    よろしくお願いいたします。

    1. コメントありがとうございます。

      私のコメントは労働局に問い合わせた結果です。

      こう記事に書きましたが、
      例えば食品加工工場でミキサーなどの洗浄で使用している業務用洗剤がありますが、それは小分け容器でスーパーでも販売している製品もあります。
      そのような場合、おそらく私もテクノヒルさんと同じコメントすると思います。
      つまりそこの線引きは曖昧で、労働局もおそらく細かい判断は所轄監督署に委ねられると思います。

      お問い合わせの内容のように、仕事に用する物を購入し、小分けにして使うことが化学物質管理者の選任が必要となった場合、ほぼ全ての会社(銀行や法律事務所などでも)で選任しなければいけなくなりますね。
      私が訊ねた専門官さんはリスクアセスメントをするにしても、法律は化学物質管理者を全ての会社で選任するということまで求めていないと話されてました。
      私も同意見です。

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