許容濃度については、前にも書きましたが、日本産業衛生学会が勧告しているもので、労働者が 1 日 8 時間、1週間40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で有害物質にばく露される場合に、当該有害物質の平均ばく露濃度がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度です。
他に、 作業中のどの時間をとってもばく露濃度がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度として、最大許容濃度があります。
TLV(Threshold Limit Value)は、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)での言い方で、許容限界値といった意味。
産業衛生学会より、ACGIHの物質数のほうが多い。なので、リスクアセスメントのアクションレベルで許容濃度を使う場合、産業衛生学会で許容濃度が勧告されていなかったら、ACGIHのTLVを参考にすると良いです。
ACGIHでは、
TLV-TWA (Time-Weighted Average) : 通常1日8時間及び1週間に40時間の労働時間に対する時間荷重平均濃度(日本でいう許容濃度)
TLV-STEL( Short-Term Exposure Limit ): 15分間の短時間ばく露限界。 たとえ8時間のばく露測定濃度(時間荷重平均濃度) がTLV-TWA 内にあっても、1日の作業のどの時間においても超えてはならない濃度。
TLV-ceiling: 作業中のばく露のいかなる時でも超えてはならない濃度である上限値 (日本でいう最大許容濃度)
TLV-STELは、8時間の個人ばく露測定をしない代わりに、15分の測定を行うという目的ではなく、8時間の作業中に、TLV-STELを超える値にならないか、要所要所で確認する目的で使います。
ですので、8時間ばく露測定の補完として行うことが正しい。
TLV-ceilingは、いかなる時でも、たとえ瞬間的にでも超えてはならない濃度で、TLV-STELのように15分間測定した値が使えるわけではありません。海外の文献みますと、半導体や光イオン(PI)検出器等の簡易測定器のログデータをみる手法のようです。
これからの測定
いままでは、作業環境管理の一環として、作業環境測定が行われてきました。
ですが、リスクアセスメントで管理濃度の定められていない物質の作業環境測定を選択する場合があると思います。
管理濃度は、前述の許容濃度と同じ値のものが多いですが、技術的に管理できる濃度を設定するという前提があります。
つまり、管理濃度は、法律で作業環境測定を行わなければならない物質にのみ定められています。作業環境測定結果は、作業環境評価基準に従って、第一管理区分、第二管理区分、第三管理区分に評価され、第三管理区分になった場合、事業主は作業環境の改善を講じなければなりません。この改善を行わなかった場合、労働基準監督署の臨検で指摘されると是正勧告がでます。悪質な場合は行政処分もありえます。管理濃度は、作業環境の良否を法的に線引きするために定められています。
この作業環境測定は、A測定とB測定で評価されますが、個人ばく露の場合、8時間の個人ばく露濃度測定の結果をC測定、TLV-STELに該当する15分間の測定をD測定と称して作業環境を評価する方向にあるそうです。
といっても、個人ばく露測定に適した作業形態であるかの見極めが必要なので、実施する場合は作業環境測定機関と相談したほうが良いです。
今後、どのように告示がでるか、注目です。
「許容濃度、TLV-TWA、ceiling」への1件のフィードバック