アーク溶接作業場の換気装置の設置届

 継続的にアーク溶接を行う屋内作業場には換気装置の設置が義務付けられています。
 では、その換気装置は労働安全衛生規則第86条に従い届出が必要か?

  不要です。

 確かに別表7の18号にはこのように書いてあり、届出が必要と読み取れなくもないです。私もそう読みました。

 これについては、県労働局からこのような趣旨の回答をいただきました。

  • 18号で書かれている全体換気装置は、5条の規定されている密閉設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置を特例許可で設置しない場合に設ける全体換気装置を対象としている。
  • 特化則28条の21で、「・・・第5条の規定にかかわらず、金属アーク溶接等作業において発生するガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備・・・を設けることを要しない。」としているので、溶接ヒュームは局所排気装置の設置義務はないので、(上の・に書いた)届出の事案に該当しない。

とのことでした。

金属ヒュームと溶接ヒューム

この記事は、「ガス切断と溶接ヒューム」を整理したものです。
これで前の記事のぐだぐだなところが整理されました。

金属アーク溶接等とは
 被覆アーク溶接、(半)自動溶接(炭酸ガス溶接、MAG溶接、MIG溶接のこと)、TIG溶接、スタッド溶接、プラズマ切断、ガウジングなど、アーク(稲妻みたいなもの)で金属を熔かして溶接や溶断、溝堀する作業です。
 この金属アーク溶接等に該当すると、「溶接ヒューム」として特化則の規制を受け、対応する必要があります。

 金属アーク溶接等に該当しないものは、圧着溶接(金属同士を密着させ通電し接合する。スポット溶接機、シーム溶接、プロジェクション溶接などが該当)、ガス溶接(アセチレン等可燃性ガスを燃焼させ、その熱で接合する)、電気炉等による金属の溶融があります。ここで発生するヒュームを金属ヒュームとします。

 上の図の最後、「対象外」としていますが、あくまで粉じん則の別表に該当しないという意味です。溶接ヒュームのように瞬間的に金属が蒸発する、金属が液体となる温度ではないので、溶接ヒュームや溶融ヒュームとしての対策は不要と考えられます。
 「防じんマスクの選択、使用等について」で金属ヒュームが発生する作業は粒子捕集効率がクラス2以上の防じんマスクを使用すること(別表の表)となっていますので、従う必要があります。

 聞いたところ、あくまで塩基性酸化マンガン(酸化マンガン(MnO)、三酸化二マンガン(Mn2O3))と溶接ヒュームを規制する目的で、研磨やガス切断を特化物で法規制する目的ではないとのことでした。
 前にも書きましたが、こういったことは通達やQ&Aで告知して欲しいですね。所轄の監督署によって判断が異なる場合がありますので、ご注意ください。