濃度基準値とTLV

第1回化学物質管理に係る専門家検討会の資料にあったので、整理します。
TLVについてはこちらを読んでください。

TLV-STELが設定されている物質

・TLV-TWAを超えTLV-STELを下回るばく露については、1回15分を超えず、かつ1労働日につき1時間以上間隔をおいた4回を超えないようにする。
・TLV-TWAを超えないこと

TLV-STELが設定されていない物質

・ごく短時間であってもTLV-TWAの5倍を超えないこと
・TLV-TWAの3倍を超える一時的な増加は、1回15分を超えず、かつ1労働日につき1時間以上間隔をおいた4回を超えないようにする。
・TLV-TWAを超えないこと

TLV-TWAの3倍の根拠

環境濃度が対数正規分布している場合、よく管理されている工程においては、短時間ばく露値の幾何標準偏差は2.0であり、全測定値の5%が幾何平均値の3.13倍を超えることに基づく。(ACGIH 2018.p.5)

TLV-C(Ceiling)について

急性中毒のように即効性の影響がある物質については、如何なる部分においても超えるべきでない値。なので、急性毒性が確認されていない化学物質には設定されていない?

濃度基準値は?

 9月1日の検討会では、ACGIHのTLVと同様、TWAとSTELの2つの基準値を設ける方向です。
 TLVと同じ考えですと、8時間の個人ばく露測定とD測定を併用するのかと思いますが、第2回の検討会で詳細を詰めるようです。

労働安全衛生法第22条との関係

 条文では「事業者は、次(化学物質や物理的要因他)の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない」としています。この対象物質はリスクアセスメント対象物如何に関わらず適用されます。
 ・リスクアセスメント対象物(則577条の2)
 ・リスクアセスメント対象物以外(則577条の3)

 リスクアセスメント対象物は作業環境測定(法65条)対象物を含みます。作業環境測定は管理濃度で評価しますが、同時に濃度基準値でばく露の低減を図らなければなりません。

 リスクアセスメント実施義務の法律は法57条の3なので、法22条の措置はリスクアセスメントの実施に関わらず行う必要があります。

◆ここらへんも今後検討会が進むにつれ、有識者が意見をだし、整理されていくと思います。

化学物質管理に係る専門家会議

令和5年、6年から変わる法律について、不明瞭なところが多いです。
その点について、標題専門家会議が開催されます。
そこでは次の事項について話し合われます。

  1. 濃度基準値関係
    ・濃度基準値の考え方
    ・設定対象物質の優先順位の考え方、対象物質の特定
    ・対象物質ごとの測定方法(捕集方法、分析方法)
  2. がん原性物質関係
    がん原性物質の対象とする物質の基準
  3. ばく露測定関係
    ・労働者のばく露の程度が濃度基準値を下回ることを確認するための測定方法
    ・作業環境測定(個人サンプリング法)の対象物質の拡大の検討
  4. 皮膚・眼対策関係
    ・皮膚又は眼に障害を与えるおそれのあることが明らかな物質の特定方法
    ・保護手袋等の選定の考え方

先日(9月1日)に第1回が開催されました。
初回なので、会議というより、趣旨と今後の流れの説明でした。
今後の予定を書いておきます。

◎第2回検討会(10月14日予定)
・ばく露が濃度基準値を下回ることを確認するための測定方法と考え方
・作業環境測定(個人サンプリング法)の対象物質の拡大の検討

◎第3回検討会(12月15日予定)
・濃度基準値の検討(約120物質)
・対象物質ごとの測定方法(捕集方法、分析方法)
・今年度の検討事項のとりまとめ(報告書)

今後も経過にご注目ください。
検討事項(4)は来年度(R6)になりそうです。