令和6年法改正までにやること

令和6年度に化学物質管理に係る安衛法改正があります。

R6リーフレット

それまでに何をすればよいのか?

それ以前に、化学物質のリスクアセスメントは実施していますか?
法改正の内容は、リスクアセスメントが定着していると理解しやすいです。
まったく実施していないと、宇宙語レベルでわからないと思います。
リスクアセスメントというと、労働安全衛生法第28条の2を思い浮かべると思いますがそれではなく、
労働安全衛生法第57条の3です。(平成27年12月1日施行)

(第57条第1項の政令で定める物及び通知対象物について事業者が行うべき調査等)
第57条の3 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第五十七条第一項の政令で定める物及び通知対象物による危険性又は有害性等を調査しなければならない。
2 事業者は、前項の調査の結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。
3 厚生労働大臣は、第二十八条第一項及び第三項に定めるもののほか、前二項の措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
4 厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導、援助等を行うことができる。

この57条の3は実施義務なので、リスクアセスメントを行わなければなりません。
簡単なフローを書くと下の通りです(分かりやすさ優先)

R6までの準備-1

化学物質のリスクアセスメントは事業場規模、業種に関係なく対象となります。
講習会は「化学物質 リスクアセスメント 講習会」で検索かけると出てきます。
厚生労働省でも無料でwebセミナー実施していました。

濃度基準値やがん原性物質などはまだ決まっていないので、順次決まってから対応していきましょう。

また、作業環境測定で第3管理区分が継続しているところは、第1、第2管理区分に環境改善しておくと良いので、作業環境測定機関さんと相談しましょう。

保護具着用管理責任者については、講習の受講義務はありません。
有害物をお使いであれば、作業主任者を選任していると思いますので、その作業主任者を保護具着用管理責任者に選任すればよいと思います。
選任したい作業主任者が「自信ない」ようでしたら、インターネットでは一部の労働基準協会さんで実施するようですので、そちらを受けてみてはいかがでしょうか。

取り扱っていない化学物質の特殊健康診断

「昔、ベンゼン取り扱っていたけど、もう30年前の話し。それでも特殊健康診断やらないといけないの?」

やらなければいけません

有害性が高く、何年も後になって健康影響がでる化学物質は、もう取り扱っていなくても特殊健康診断をやらなければなりません。

特殊健康診断の根拠条文は
労働安全衛生法第66条ですが、その第2項の後段(太字)が昔取り扱っていた作業者も特殊健康診断をしなければならない旨を書いてます。

事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。

その物質は、労働安全衛生法施行令第22条第2項に書かれています。

 法第六十六条第二項後段の政令で定める有害な業務は、次の物を製造し、若しくは取り扱う業務又は石綿等の製造若しくは取扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務とする。
一 ベンジジン及びその塩
一の二 ビス(クロロメチル)エーテル
二 ベータ―ナフチルアミン及びその塩
三 ジクロルベンジジン及びその塩
四 アルフア―ナフチルアミン及びその塩
五 オルト―トリジン及びその塩
六 ジアニシジン及びその塩
七 ベリリウム及びその化合物
八 ベンゾトリクロリド
九 インジウム化合物
九の二 エチルベンゼン
九の三 エチレンイミン
十 塩化ビニル
十一 オーラミン
十一の二 オルト―トルイジン
十二 クロム酸及びその塩
十三 クロロメチルメチルエーテル
十三の二 コバルト及びその無機化合物
十四 コールタール
十四の二 酸化プロピレン
十四の三 三酸化二アンチモン
十五 三・三′―ジクロロ―四・四′―ジアミノジフエニルメタン
十五の二 一・二―ジクロロプロパン
十五の三 ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)
十五の四 ジメチル―二・二―ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP)
十五の五 一・一―ジメチルヒドラジン
十六 重クロム酸及びその塩
十六の二 ナフタレン
十七 ニツケル化合物(次号に掲げる物を除き、粉状の物に限る。)
十八 ニツケルカルボニル
十九 パラ―ジメチルアミノアゾベンゼン
十九の二 砒ひ素及びその化合物(アルシン及び砒ひ化ガリウムを除く。)
二十 ベータ―プロピオラクトン
二十一 ベンゼン
二十二 マゼンタ
二十二の二 リフラクトリーセラミックファイバー
二十三 第一号から第七号までに掲げる物をその重量の一パーセントを超えて含 
有し、又は第八号に掲げる物をその重量の〇・五パーセントを超えて含有する製 
剤その他の物(合金にあつては、ベリリウムをその重量の三パーセントを超えて 
含有するものに限る。)
二十四 第九号から第二十二号の二までに掲げる物を含有する製剤その他の物 
で、厚生労働省令で定めるもの

ただし、各特別則で適用除外としている作業(省令に定めるもの)は除く
(法原文は物質名が書いていないので管理人が書き換え、意味をたがえない程度に、以下は書きおろしています。)

 オーラミン若しくはマゼンタに掲げる物又は第二十四号に掲げる物でオーラミン若しくはマゼンタに係るものを製造する事業場以外の事業場においてこれらの物を取り扱う業務
 クロム酸及びその塩若しくは重クロム酸及びその塩に掲げる物又は第二十四号に掲げる物でクロム酸及びその塩若しくは重クロム酸及びその塩に係るものを鉱石から製造する事業場以外の事業場においてこれらの物を取り扱う業務
 エチルベンゼン、コバルト及びその無機化合物、酸化プロピレン、三酸化二アンチモン、一・二―ジクロロプロパン、一・二―ジクロロプロパン、ジクロロメタン、ジメチル―二・二―ジクロロビニルホスフェイト、ナフタレン若しくはリフラクトリーセラミックファイバーに掲げる物又は第二十四号に掲げる物でインジウム化合物、エチルベンゼン、コバルト及びその無機化合物、酸化プロピレン、三酸化二アンチモン、一・二―ジクロロプロパン、ジクロロメタン、ジメチル―二・二―ジクロロビニルホスフェイト、ナフタレン若しくはリフラクトリーセラミックファイバーに係るものを製造し、又は取り扱う業務

令別表3、令22条2項及び特別管理物質の比較表を作りましたので参考まで。

 雇い入れ時の特殊健康診断の結果の保存期間は、
     有機溶剤 特化物(特別管理物質は除く) 5年
     特化物(特別管理物質)        30年 となっています。
 近年は有害性の見直しで、保存年数が延長される物質が出ています。
 例えば、過去にベンゼンを取り扱っていた作業者の特殊健診で、毎回貧血で有所見をなる場合、雇い入れ時の健診結果がないと、体質なのか業務性なのか判断がつかない場合があります。
 特化則の健診結果の保存は、昭和50年に第40条が改正されるまでは30年ではありませんでした。だから以前の特殊健診の結果は廃棄していたので確かめようがないのです。
 法で定める保存年数とは関係なく、有害物を取り扱うことになった作業者の雇い入れ時の特殊健康診断結果は、できれば廃棄せずに保管したほうが良いと思います。