溶接ヒュームが令和3年4月より特化物になります。
溶接ヒュームリーフレット特化則で規制されることになりますと、健康診断や作業環境測定はどうなるの?というところですが、健康診断は必要になりますが、作業環境測定は有機溶剤などのように6ヶ月以内に1回やらなければいけないという義務はありません。
では、この標題の「測定」は?
測定方法は、作業者の身体に試料採取機器等を装着する方法になります。(特化則第38条の21 第2項)
目的が2つあります。
一つは、設備の換気能力の確認
もう一つは、溶接している環境に適した呼吸用保護具を選定するためです。
では、溶接作業場すべて測定を行わなければならないか?
換気能力の確認が必要な作業場は、
「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場」のうち、
・当該作業の方法を新たに採用するとき
・溶接方法、溶接材料・母材の変更、作業場所の変更しようとするとき
実施しなければなりません。
「継続」の定義
この「継続」は、常時性の定義とは異なります。
通達(基安化発0115第1号 R3.1.15)では次の様に回答されてます。
新特化則第38条の21第2項の規定に基づく溶接ヒュームの濃度測定は、当該濃度測定の結果を踏まえた作業環境の改善を図るために実施するものであること。このため、同じ場所で繰り返し行われない金属アーク溶接等作業については、溶接ヒュームの濃度測定の結果を作業環境の改善を図るために実施するものであること。このため、同じ場所で繰り返し行われない金属アーク溶接等作業については、溶接ヒュームの濃度測定の結果を作業環境の改善に活かすことが難しいことから、新特化則における義務としないこと。
一方、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業については、その頻度が少ない場合であっても、溶接ヒュームの濃度測定の結果を作業環境の改善に活かすことができることから、溶接ヒュームの濃度測定を実施する必要があること。
また、Q&Aでも
屋内において特定の場所で繰り返し行っている場合、頻度に関係なく、たとえ年に数回であっても、その場所で溶接作業が行われるのであれば、その機会に濃度測定が可能であることから、「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場」に該当します。
ご自分の会社がこの「継続」に該当するかは、測定機関の詳しい方に尋ねることをお勧めします。
上の②と③が測定後の対応になります。
(注 ⑤のフィットテストは、R3.1.26に出た通達で、R5.3.31まで経過措置期間となりました。)
では2つめの「溶接している環境に適した呼吸用保護具を選定」は?
結論からいうと、屋内で継続的に溶接している作業場すべてで測定を行う必要があります。
特化則第38条の21(要点)
第5項 事業者は、当該労働者に有効な呼吸用保護具を使用させなければならない。
第6項 測定に応じて、有効な呼吸用保護具を使用させなければならない。
とあります。この2つは「新たな方法、または変更するとき」の語句が書かれていないので、すべてが対象となります。
作業者の身体に試料採取機器等を装着する測定の結果、作業者の呼吸域のマンガン濃度が仮に 0.22㎎/㎥だっととします。
0.22/0.05=4.4
この「4.4」という値をもって、下の表の「指定防護係数」の値と比較し、有効な呼吸用保護具を選定します。
4.4なので、4のRS1、RL1、DS1、DL1のマスクは使用できません。少なくともRS2、RL2、DS2、DL2のマスクを選定しないといけません。
Rは「取替式」、Dは「使い捨て式」の防じんマスクで、1や2はフィルターの性能です。2や3の方がフィルターの性能は良いのですが、少し吸気抵抗があります。
吸気抵抗が気になるなら、フィルターを2つ付ける取替式防じんマスクを選ぶと呼吸が楽です(コスト高)。
測定の結果、区分1のマスクでもいいという結果になったけどいいの?
「防じんマスクの選択、使用等について」(平成17年2月7日付け基発第0207006号)の通達の表には、管理濃度 0.1㎎/㎥以下の場合は、RS2、RL2、DS2、DL2以上のマスクの使用が求められています。
測定をして、RS1、RL1、DS1、DL1のマスクでもよいとなった場合は、測定の結果で選定したマスクでよいとしてます。
ですが、市場にはRS2、RL2、DS2、DL2のマスクの方が、種類多く出回っていますので、そちらを選択したほうがよいと思います。
(追記 R3.1.26)
厚生労働省からQ&Aが出ました。
測定の結果、RS1などのクラス1でもよい結果になっても、上記の通達と比べて粒子捕集率の高い方のマスクを選定することとあります。
ですので、どんなに測定結果が良くても、クラス2以上のマスクを使わなければなりません。
これで通達と整合性が取れました。
マスクを選定したあとは?
1年以内に1回、定期に、呼吸用保護具が適切に装着されていることを確認しなければなりません。
この確認方法も定められており、専用の機械を使って行う必要があり、1人あたり7~8分時間が掛かりそうです。
これを業務時間に、毎年やらなければいけないので大変です。
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