2020.7.14 訂正
第2条、第3条の適用除外を利用するには、有機溶剤の使用量を算出しないといけません。その計算式を説明します。(ただし、有機溶剤業務 イ、ロ、ヲは適用されません)
第2種有機溶剤の計算(第1種、第3種の式はこちら)
有機溶剤の許容使用量(g)=2/5 × 作業場の気積(m3)
気積は天井が高いと許容使用量が多くなるので、4mを超える高さは計算にいれません。また、広い作業場であっても、有機溶剤蒸気の拡散が狭いケースが考えられるので、気積の上限を150m3としてます。
結果、第2種有機溶剤の許容使用量の上限は60gになります。
部屋が狭かったら、この上限も小さくなります。
なお、2/5という数字は、第1種有機溶剤は1/15、第3種有機溶剤は3/2が入ります。なので、第1種有機溶剤は10g、第3種は225gになります。
1日に消費する有機溶剤等の量
一番面倒なのが、どれだけ使っているかです。
作業時間は比較的認識しやすく、かつ器具が不要です。
おおざっぱにならば、納品の数と頻度で、おおよその使用量はわかりますが、部署毎の使用量が把握できません。適用除外を受けるくらいですから、1日100mL弱くらいでしょう。なので、できれば部署毎、さらには部屋毎に把握することをお奨めします。試験・研究の場合は、さらに作業手順書毎に把握しましょう。
例)1日の使用量
・塗料(合成樹脂エナメル塗料) 5kg
・硬化剤 0.1kg
・塗料用シンナー 1L
・洗浄用シンナー 1L
これらの量に、「有機溶剤中毒予防規則第2条第2項第1号及び第2号並びに第17条第2項第2号及び第3号の規定に基づく有機溶剤等の量に乗ずべき数値」(改定昭和53年8月7日 労働省告示第87条)で定めている数値を掛けます。
表の区分にぴったりと適合しないですが、次の数値を使って計算します。
塗料(合成樹脂エナメル塗料)・・・その他の塗料 0.6
硬化剤 ・・・その他の塗料 0.6
塗料用、洗浄用シンナー ・・・シンナー類 1.0
塗料5×0.6+硬化剤0.1×0.6+シンナー2×1.0=5.06kg
g(グラム)に直すと、5060gなので、ここの作業場の適用除外はできないことになります。
※ここまでの計算は、有機溶剤業務ハ~ヌまで適用されます。ル(試験、研究の業務)は適用されません。
※この記事は2019年に書いたものですが、当時の監督署の人は「合成樹脂エナメル塗料は合成樹脂ペイントとしていいのでは?」と話していました。
その後調べたところ、「合成樹脂ペイント」は古い言い方らしく、今どきは「〇〇樹脂エナメル」とかに該当しそうです。アクリル樹脂エナメルはこれらに該当しないので、「その他の塗料」としました。
なお、「エナメル」は顔料入り塗料、「ワニス」は顔料の入らないクリアー系塗料の意味のようです。(2021.5.17加筆)
1日300gで使用時間が6時間の場合
「1時間あたりに直すと、50gなので、適用除外できる」
いえ、できません。
普通の屋内作業場の認識と、有機則のいう屋内作業場に開きがあります。
いわゆる、普通の、窓がある部屋は、有機則でいう「通風の不十分な屋内作業場」になります。
この「通風の不十分な屋内作業場」は、この条文でいう「タンク等の内部」に該当するので、許容使用量の単位は1日で計算しなければならないのです。
でも、通風が十分な屋内作業場ならば、1時間の使用量50gを使うことができます。
通風が十分な屋内作業場って?
告示では、
「通風が不十分な屋内作業場」とは、天井、床及び周壁の総面積に対する直接外気に向かって開放されている窓その他の開口部の面積の比率(開口率)が3%以下の屋内作業場をいうものである。
となってます。
なので、開口率が3%超えていれば、通風が十分である屋内作業場といえます。ここで「開口部が」とありますので、開いていなければこの要件を満たしません。雨や雪で窓を閉める場合は適用除外されないのでご注意ください。(2021.5.17改訂)
参考に、有機則第7条の屋内作業場の周壁が開放されている場合の適用除外の説明をします。
次に該当する屋内作業場においては、第5条(設備関係)の規定は適用しない。
1.周壁の2側面以上、かつ、周壁の面積の半分以上が直接外気に向かって
開放されていること。
2.当該作業場に通風を阻害する壁、衝立その他の物がないこと。
こちらは、「窓」という表記がないので、開口部を閉めようがない状態です。ですので、窓を閉めて、開口面の割合が3%以下になるならば、その場所は「タンク等の内部」として扱うこととされています。
この記事の告示
・昭和35年10月31日 基発第929号
・昭和53年8月31日 基発第479号
・昭和53年12月25日 基発第707号
・安全衛生業務執務必携(非売品)
使用量と蒸発量(「ル 試験、研究の業務」の使用量の計算)
「有機溶剤中毒予防規則第2条第2項第1号及び第2号並びに第17条第2項第2号及び第3号の規定に基づく有機溶剤等の量に乗ずべき数値」には、乗ずべき数字として、
有機溶剤 1.0
有機溶剤含有物 表の数値 となってます。
「有機溶剤」とは、有機則第1条第1項第1号に、労働安全衛生法施行令別表第6の2に掲げる有機溶剤をいう。とあります。基本単品と考えます。
他の溶剤等が混ざっている有機溶剤含有物の場合は、表の数値を使う。と読めます。
この表の数値は、樹脂等有機溶剤以外のものが入っているから、それを勘案したこの数値を使いましょう。とかいてあります。洗浄用溶剤は樹脂等不純物が入っていないので1.0が妥当かと。ただ、昔、適用除外の監督署に提出した書類を、事業場の方から見せてもらう機会がありました。その計算は、含有率を乗じて算出してました。その計算方法でなにも指摘されなかったと聞きました。監督署によって、違うかもしれません。
また、この洗浄でつかった溶剤を、すべて揮発させるのではなく、ドレンから回収する場合は、すべて揮発させるわけではなりませんが、この場合の使用量は、文字通り使った量になります。つまり、10リットルの容器に8リットル入れたら、その8リットルが使用量になります。
では、試験、研究はどのように計算するかというと、使用前と使用後の差が使用量となるようです。