局排に係る特例許可(特化則)

 特化則では、局所排気装置の性能要件が制御風速のものと、抑制濃度のものがあります。
 その抑制濃度の場合の設置届と特例許可について説明します。

 フローで書くとこのようになります。
 抑制濃度は「局所排気装置を設置する」→「抑制濃度が定められている場合」へ進みます。
 特例許可は「局所排気装置を設置しない」へ進んだ場合必要になります。
 ご覧のとおり面倒です。
 発散防止抑制装置については、特例許可を申請しても許可が下りない場合があります。この許可、不許可の基準は公表されていませんが、排気が屋内の場合は除ガス装置等出口に警報装置が必要といわれています。

 これだけ骨を折っても、作業環境測定は除外されませんのでご注意ください。

金属の沸点について

当方金属組成の専門家ではないので、学術的にどうなのか問われると答えられませんので質問はご遠慮ください。

自分のなかの、ぼや~としたところをまとめます。

水は沸点まで温度が上がらなくても蒸発します。
では金属はどうなの?

アーク等の温度と金属(一部)の沸点等をまとめてみました。

 温度はwiki先生に聞きました。
 アークの温度は電流、電圧条件で変わるので温度に幅がありますが、空気中に電気を流すのでそれなりの温度になります。アセチレンはガスの最適の燃焼温度が決まってくるので概ねこの温度になります。他の融点、沸点はサイトによって微妙に異なるので「概ね」の温度とお考えください。

 このように、アークとアセチレンの温度はかなり違います。アークは金属などの沸点に比べてかなり温度が高いので、一瞬で金属を沸騰させることができます。ですのでアーク溶接は著しく溶接ヒュームが発散するとして規制がかけられました。ガス切断もヒュームは出ますが、アークほどではないということで溶接ヒュームとはしないようです。

 参考として、別の法令である鉛について書きます。
 上の図で「鉛則で設備規制を分ける温度 450℃」とあります。
 鉛則では、この450℃を境に、鉛粉じんとして、鉛ヒュームとして、設置しなければならない設備の要件を分けています。(このような記述はどこにも書いていませんが、そのように聞いています。)
 鉛の融点は327℃なので、融点より少し高い温度から鉛ヒュームは発生するとし、規制されています。沸点の1749℃と比べるとかなり低い温度です。
 ほかの金属も融点から少し高いところからヒュームが発生するかは言えませんが、沸点に達していなくてもヒュームは発生すると考えてよさそうです。

 ではアセチレンバーナーで金属をあぶり続けると金属はすべて蒸発するか?
 試したことありませんが、おそらくバーナーの噴出力で溶けた鉄が吹き飛ばされてしまい、沸点まで金属の温度を上昇させることは出来ないのではないかと思います。ですが、取鍋で金属を溶解する製鉄所は注意が必要です。
 なお製鉄所でのステンレスの製鉄工程は、マンガンの規制対象となっています。

ガス切断と溶接ヒューム

 改正特化則の施行前なので、大分情報が出てきました。
 ですが、重箱の隅をつつくようですが、曖昧なところも出てきました。

 例えば、金属アーク溶接等に該当しないガスやレーザーによる切断はどうするか?

 今までの法解釈を整理すると次のようになります。

金属アーク溶接等とは
 被覆アーク溶接、(半)自動溶接(炭酸ガス溶接、MAG溶接、MIG溶接のこと)、TIG溶接、スタッド溶接、プラズマ切断、ガウジングなど、アーク(稲妻みたいなもの)で金属を熔かして溶接や溶断、溝堀する作業です。
 この金属アーク溶接等に該当すると、「溶接ヒューム」として特化則の規制を受け、対応する必要があります。

 金属アーク溶接等に該当しないものは、圧着溶接(金属同士を密着させ通電し接合する。スポット溶接機、シーム溶接、プロジェクション溶接などが該当)、ガス溶接(アセチレン等可燃性ガスを燃焼させ、その熱で接合する)、電気炉等による金属の溶融があります。

「取り扱いで粉じんが発生*¹」しない*²」「特化則の規制なし*³
 粉じん則では、粉じんが発生する作業が具体的に示されていますが、特化則ではされていません(*1)。粉じん作業に該当する作業は粉じんが発生するといって差し支えないですが、粉じん作業に該当しない刃物(メタルソー、バイト、フライス、エンドミル等)で切削する作業、プレス成型(絞り、打ち抜き)、鍛造については明確に規制外とは言えません。(私見ですが、粉じんが発生しても、まず問題ないレベルだと思います。)(*2)

 特化則では副次的に、非意図的に発生した場合も規制されます。
 マンガンが1%超えて含有する金属をガス切断する場合、溶接ヒュームとして規制はされませんが、ガス燃焼による熱によって、副次的に塩基性酸化マンガン等が発生することが考えられます。
 ではその場合、マンガンとして規制され、作業環境測定等が必要になるのか?
 この件について、労働衛生専門官にお尋ねしたところ、まだそこまで議論されていないから答えられない。とのことでした。ただまあ、アークに比べて著しい発じんがないからガス切断は溶接ヒュームから除外されているので、溶接ヒュームより管理が厳しくなるとは考え難いところはあります。なので、ガス切断は粉じん則の別表3の防じんマスクを付けなければならない作業に該当するので、防じんマスクで対応すればよいのではないかと個人的に考えています。(*3)(のちに厚生労働省より見解がでるかもしれません。)

(R3.2.27追記)
 「マンガンの蒸気、粉じんが発生する作業は取り扱いに該当する。」とQ&Aにありました。つまり、マンガンを含有する金属をガス溶断、レーザー切断及び研磨など金属アーク溶接等作業に該当しない作業は上記のフロー図のとおり、マンガン及びその化合物として規制されるようです。ですので、作業環境測定や特殊健康診断を6ヶ月に1回、定期に実施しなければならない。と労働衛生専門官さんから回答もらいました。
 マンガンを含んだ金属はどのようなものがあるかといいますと、ステンレスが該当します。ステンレスもいろいろあり、そのうちSUS300番台はマンガンを2%以下、ニッケル5%以上含有しています。カトラリーのスプーン、フォークは18-8ステンレスを材料としていますが、これはSUS300番台のステンレスになります。ちなみに18-8の、「18」はクロム、「8」はニッケルの含有率を表しています。
 お恥ずかしい話し、今までステンレス加工の工場で、マンガンの測定の必要性を話してきませんでした。同様に労働衛生専門官さんも臨検に行ってマンガンの測定について指摘(是正勧告)したことがないと話していました。今後はSUS300番台のステンレス研磨作業については、マンガンとニッケルの作業環境測定が必要であるといえます。
 ちなみに、溶接ヒューム内にニッケルも含まれますが、そちらは溶接ヒューム(マンガン)として規制がかかるだけのようです。
 「蒸気、粉じんが発生する取り扱い作業」はどのような作業か、粉じん則の別表1に該当するものを対象として考えてよいか。と尋ねたところ、粉じん則と特化則は別なので、同様に判断してよいとは云えない。とのことでした。

 余談ですが、先ほどの労働衛生専門官さんとの話しで、
「金属を真っ赤になるまで加熱しプレスで押しつぶして加工すると、表面の金属が剥がれるように脱落します。おそらく酸化鉄だと思うんですが、加工する金属にマンガンを含んでいる場合、マンガンの対象になるんでしょうか?またとろける温度でなければヒュームは出ないと考えてよいのでしょうか?」
「あれはなんでしょうね~。酸化鉄ならマンガンではないと考えてよいと思いますが、その剥がれたものを分析しないと、明確に『出てない』とは云えませんね~。温度についてはそこまで議論が進んでいないのでなんとも言えませんね。」とのことでした。

追記(令和3年1月31日 管理人のメモ的なもの)
 コバルトの特化則規制で、当該粉じん等にばく露するおそれがないとして対象外とした作業の一部で、
 「コバルトを含有する合金をプレス成型(打ち抜きを除く)する作業、加熱せずに行う圧延作業」があります。
 裏を返すと、プレスによる打ち抜き、熱間圧延は対象となります。
 特化則は物質が違うと考え方も違うので、マンガンも同様と云う訳ではありませんが、参考まで。

溶接ヒュームの測定

溶接ヒュームが令和3年4月より特化物になります。

溶接ヒュームリーフレット

特化則で規制されることになりますと、健康診断や作業環境測定はどうなるの?というところですが、健康診断は必要になりますが、作業環境測定は有機溶剤などのように6ヶ月以内に1回やらなければいけないという義務はありません。

では、この標題の「測定」は?
測定方法は、作業者の身体に試料採取機器等を装着する方法になります。(特化則第38条の21 第2項)
目的が2つあります。
一つは、設備の換気能力の確認
もう一つは、溶接している環境に適した呼吸用保護具を選定するためです。

では、溶接作業場すべて測定を行わなければならないか?
換気能力の確認が必要な作業場は、

「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場」のうち、
・当該作業の方法を新たに採用するとき
・溶接方法、溶接材料・母材の変更、作業場所の変更しようとするとき
 実施しなければなりません。

「継続」の定義

 この「継続」は、常時性の定義とは異なります。
 通達(基安化発0115第1号 R3.1.15)では次の様に回答されてます。

 新特化則第38条の21第2項の規定に基づく溶接ヒュームの濃度測定は、当該濃度測定の結果を踏まえた作業環境の改善を図るために実施するものであること。このため、同じ場所で繰り返し行われない金属アーク溶接等作業については、溶接ヒュームの濃度測定の結果を作業環境の改善を図るために実施するものであること。このため、同じ場所で繰り返し行われない金属アーク溶接等作業については、溶接ヒュームの濃度測定の結果を作業環境の改善に活かすことが難しいことから、新特化則における義務としないこと。
 一方、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業については、その頻度が少ない場合であっても、溶接ヒュームの濃度測定の結果を作業環境の改善に活かすことができることから、溶接ヒュームの濃度測定を実施する必要があること。

また、Q&Aでも

 屋内において特定の場所で繰り返し行っている場合、頻度に関係なく、たとえ年に数回であっても、その場所で溶接作業が行われるのであれば、その機会に濃度測定が可能であることから、「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場」に該当します。

 ご自分の会社がこの「継続」に該当するかは、測定機関の詳しい方に尋ねることをお勧めします。

ここの「ページ」は上のリーフレットのページを表してます。

上の②と③が測定後の対応になります。
(注 ⑤のフィットテストは、R3.1.26に出た通達で、R5.3.31まで経過措置期間となりました。)

では2つめの「溶接している環境に適した呼吸用保護具を選定」は?
結論からいうと、屋内で継続的に溶接している作業場すべてで測定を行う必要があります。

特化則第38条の21(要点)
 第5項 事業者は、当該労働者に有効な呼吸用保護具を使用させなければならない。
 第6項 測定に応じて、有効な呼吸用保護具を使用させなければならない。
とあります。この2つは「新たな方法、または変更するとき」の語句が書かれていないので、すべてが対象となります。

 作業者の身体に試料採取機器等を装着する測定の結果、作業者の呼吸域のマンガン濃度が仮に 0.22㎎/㎥だっととします。
  0.22/0.05=4.4
この「4.4」という値をもって、下の表の「指定防護係数」の値と比較し、有効な呼吸用保護具を選定します。

4.4なので、4のRS1、RL1、DS1、DL1のマスクは使用できません。少なくともRS2、RL2、DS2、DL2のマスクを選定しないといけません。

シゲマツさんHPより

Rは「取替式」、Dは「使い捨て式」の防じんマスクで、1や2はフィルターの性能です。2や3の方がフィルターの性能は良いのですが、少し吸気抵抗があります。
吸気抵抗が気になるなら、フィルターを2つ付ける取替式防じんマスクを選ぶと呼吸が楽です(コスト高)。

測定の結果、区分1のマスクでもいいという結果になったけどいいの?

「防じんマスクの選択、使用等について」(平成17年2月7日付け基発第0207006号)の通達には、管理濃度 0.1㎎/㎥以下の場合は、RS2、RL2、DS2、DL2以上のマスクの使用が求められています。
 測定をして、RS1、RL1、DS1、DL1のマスクでもよいとなった場合は、測定の結果で選定したマスクでよいとしてます。
 ですが、市場にはRS2、RL2、DS2、DL2のマスクの方が、種類多く出回っていますので、そちらを選択したほうがよいと思います。

(追記 R3.1.26)
 厚生労働省からQ&Aが出ました。
 測定の結果、RS1などのクラス1でもよい結果になっても、上記の通達と比べて粒子捕集率の高い方のマスクを選定することとあります。
 ですので、どんなに測定結果が良くても、クラス2以上のマスクを使わなければなりません。
 これで通達と整合性が取れました。

マスクを選定したあとは?

 1年以内に1回、定期に、呼吸用保護具が適切に装着されていることを確認しなければなりません。
 この確認方法も定められており、専用の機械を使って行う必要があり、1人あたり7~8分時間が掛かりそうです。
 これを業務時間に、毎年やらなければいけないので大変です。

 測定に関する猶予は令和4年3月31日までなので、それまでに測定を行うようにしましょう。

厚生労働省のページリンク

溶接ヒュームに係る法改正のリーフレット

溶接リーフレット

溶接ヒュームに係る法改正について、まとめられたリーフレット(愛知労働局作成)を見つけましたので、貼り付けておきます。
ただし、ぽい。っと渡すのではなく、ちゃんと解説する必要があると思います。

金属アーク溶接等作業に係る措置

5月19日加筆
5月15日加筆
6月19日加筆

特定化学物質障害予防規則及び寛容測定法施行規則の一部を改定する省令(令和2年4月22日厚生労働省令第89号)

令和2年4月22日 省令第89号

化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会
同報告書(全文)(PDF)
パブリックコメント

法改正の官報と、その根拠となった検討会ページ、検討会報告書(全文)及びパブリックコメントです。
詳細は直接読んでいただくとして、一部ピックアップして、簡単に説明します。

(金属アーク溶接等作業に係る措置)
第三十八条の二十一
事業者は、金属をアーク溶接する作業、アークを用いて金属を溶断し、又はガウジングする作業その他の溶接ヒュームを製造し、又は取り扱う作業(以下この条において「金属アーク溶接等作業」という。)を行う屋内作業場については、当該金属アーク溶接等作業に係る溶接ヒュームを減少させるため、全体換気装置による換気の実施又はこれと同等以上の措置を講じなければならない。この場合において、事業者は、第五条の規定にかかわらず、金属アーク溶接等作業において発生するガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けることを要しない。


金属アーク溶接作業の範囲
溶接棒やワイヤにマンガンが含有していなくても、溶接ヒューム内にマンガンが含まれていることから、含有率に関係なく、すべてのアーク溶接、プラズマ溶接が対象になります(ガウジング含む)
この第38条の21で、溶接ヒュームに関して「別表第1 34の2」と触れていないので、34の2に書かれている「1%以下のものを除く」は適用されないと考えるようです。参考までに、検討会報告書内に溶接ヒューム中のマンガンを分析した例がありました。軟鋼系溶接棒を用いた被覆アーク溶接では、2.56~2.77%だそうです。
自動溶接を行う場合、金属アー ク溶接等作業には自動溶接機による溶接中に溶接機のトーチ等に近付く等、溶接ヒュームにばく露するおそれのある作業が含まれ、溶接機のトーチ等から離れた操作盤の作業、溶接作業に付帯する材料の搬入・搬出作業、片付け作業等は含 まれないことを通達で示す予定。
また、屋内外関わらず対象としています。(パブコメより)

法規制が掛からない溶接は、アセチレンガスにより接合するガス溶接はアークの発生熱より低いとされ、溶接ヒュームが出ない(少ない)ことから対象外とされています。
対象になるかどうか不明な溶接は、圧接に該当するスポット溶接、シーム溶接、プロジェクション溶接です。これらは金属同士を押し付けて、そこに電気を通して発生した熱で溶接するものですが、サイト、記事によってはアーク溶接に含まれているものもあれば含まれていないものもあります。よくスポット溶接機でスパッタが飛ぶのを見かけますが、適切な圧力、電圧で行っていればスパッタは発生しないそうです。あのスパッタは接合部の溶けた金属が圧力で飛び出しているので、強度が落ちるそうです。

溶解フェロマンガンヒュームについて補足
フェロマンガンは鉄とマンガンの合金です。溶接や製鉄で発生するヒュームは、酸化マンガン、このフェロマンガンの化合物が多いです。製鉄で鉄の代わりに珪素を含んだシリコマンガンを鋳込むことがありますが、シリコマンガンは溶けて、マンガンはフェロマンガンになり、珪素分は非晶性シリカとして発生しているようです。

局所排気装置等を設けることを要しない。とした件
局所排気装置を設置した作業場であっても、環境改善の効果が顕著に表れていないことから、設置義務を除いたものと考えられます。
溶接を特定の場所で、適切に設計された局所排気装置ならば効果が見込められますが、広い定盤であちこちに移動して溶接するような場合は局所排気装置の設置の費用対効果は低いと思われます。

第2項
事業者は、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場において、新たな金属アーク溶接等作業の方法を採用しようとするとき、又は当該作業の方法を変更しようとするときは、あらかじめ、厚生労働大臣の定めるところにより、当該金属アーク溶接等作業に従事する労働者の身体に装着する試料採取機器等を用いて行う測定により、当該作業場について、空気中の溶接ヒュームの濃度を測定しなければならない。

「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場」には、建築中の建物内部等で当該建築工事等に付随する金属アーク溶接等作業であって、同じ場所で繰り返し行われないものは含まれないことを通達で示す予定です。(パブコメより)
つまり、屋内たらしめている構造物がなくなる場合は継続に該当しない。ということになりそうです。普通の建屋内での溶接作業は、たとえ巨大なものであっても対象となりそうです。ただし、建屋がスライドして天井、壁が開放され、クレーンで運搬する船舶の船体ブロックの溶接作業については監督署判断になりそうです。

この第2項の測定は、労働安全衛生法第65条に基づく作業環境測定ではなく、同法第22条に基づく健康障害を防止するための措置に係る測定に該当します。(報告書より)
個人サンプリングによる空気中の溶接ヒュームの濃度の測定の実施者については、法令上の規定は設けませんが、第一種作業環境測定士、作業環境測定機関等の十分な知識及び経験を有する者により実施されるべきであることを通達で示す予定です。(パブコメより)
第65条に基づいて測定を行う場合、個人サンプラーを用いた測定を業務規程に盛り込み、登録証を書き換えた測定機関で、かつ測定士も必要な講習を修了して登録した者でないと実施できない状態です。パブコメでどのような要件の者が実施できるようになるかまだ不明ですが、第65条に基づく前述の測定機関でないと、個人サンプラーを用いた測定は難しいと思われます。現状、そのための講習会もCOVID-19により行われていない状態です。この測定実施の猶予が令和4年3月31日ですが、間に合わないかもしれませんね。(個人の意見)

この一連の溶接ヒュームの測定は、粉じんとしてではなく、マンガン(レスピラブルダスト)を測定します。

第3項
事業者は、前項の規定による空気中の溶接ヒュームの濃度の測定の結果に応じて、換気装置の風量の増加その他必要な措置を講じなければならない。


測定結果に応じて、十分に環境改善措置を検討し、その措置をあらかじめ実施している作業場に、さらなる改善措置を求める趣旨ではない。(報告書より)

第5項
事業者は、金属アーク溶接等作業に労働者を従事させるときは、当該労働者に有効な呼吸用保護具を使用させなければならない。


既に粉じん則の別表3で、溶接作業者については、屋内外問わず、防じんマスクの着用について定められています。

第6項
事業者は、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場において当該金属アーク溶接等作業に労働者を従事させるときは、厚生労働大臣の定めるところにより、当該作業場についての第二項及び第四項の規定による測定の結果に応じて、当該労働者に有効な呼吸用保護具を使用させなければならない。

第7項
事業者は、前項の呼吸用保護具(面体を有するものに限る。)を使用させるときは、一年以内ごとに一回、定期に、当該呼吸用保護具が適切に装着されていることを厚生労働大臣の定める方法により確認し、その結果を記録し、これを三年間保存しなければならない。

第6項、第7項の呼吸用保護具については、現在情報収集中です。
選定した呼吸用保護具が面体形の場合は着用の状態を確認することとなっています。その確認方法は定量的フィットテストとしています。ルーズフィット形を選んだ場合は装着性の確認については特に規定されていません。
定量的マスクテストですが、マスクフィッティングテスターを用いてマスクの外と内の粉じん濃度を測定する方法と、サッカリン等甘味を感じる粒子状物質を用いて行う方法があります。マスクフィッティングテスターの方は簡単に計測する方法と、右向いて左向いてなど動作を伴う方法があり、後者をしなければならないとなると、時間とコストが掛かるので、わかり次第加筆します。

また、そもそもですが、
第38条の21 「溶接ヒュームを製造し、」というくだり
パブコメには、労働安全衛生法施行令(昭和 47 年政令 第 318 号)第 21 条等の「製造し、又は取り扱う」特定化学物質には、溶接ヒュー ムの他にも、副次的に生成されるコールタール、五酸化バナジウム等があります。このように、「製造」は、非意図的な生成をも含む趣旨で運用されています。と書いてます。
コールタールは防腐剤として用いられますが、石炭をコークス炉で焼成するときも発生します。そちらはコークス炉の対策として特化則に規定されています。このコークス炉から副次的に発生するコールタールを捕集して、製品にしているならば製造に該当します。別の物質でも副次的に発生したものを捕集精製して使用するならば製造に該当するとした通達が出ています(昭和47年12月23日 基発第799号)。これを踏まえると溶接ヒュームは製造に該当しないと思われます。(溶接ヒュームは「製造」として例外的に取り扱うらしいです)
「製造」とする場合、特化則の第4条の規定が関わってきます。こちらでは密閉式の構造としなければならない。と書いてあります。
38条の21には、「~~この場合において、第5条の規定に関わらず~設けることを要しない」とありますが、第4条まで適用除外を含んでいないことから、第4条について対応が必要になるかもしれません。

<以下、5月19日加筆、修正>
施行令別表第3 34の2 溶接ヒューム
施行令別表のほうは、含有率によるくくりはありません。すべて対象です。
こちらはどのような規制に関わるかは、
施行令第6条 作業主任者を選任すべき作業・・・選任の義務あり
同令第9条の3 法第31条の2の政令で定める設備・・・対象外
同令第17条 製造の許可を受けるべき有害物・・・対象外
同令第18条 名称等を表示すべき危険物及び有害物・・・対象外
同令第18条の2 名称等を通知すべき危険物及び有害物・・・同令別表第9の改正案が出されていないことから、SDS等の通知義務はないと考える
同令第21条 作業環境測定を行うべき作業場・・・マンガンは該当するが、溶接ヒュームは該当しないので、法65条に係る作業環境測定の義務はない
同令第22条 健康診断を行うべき有害な業務・・・溶接ヒュームは除外されないから実施しなければならない。ただし、特化則に別に規定されているので、次のブロックで説明します。

特化則別表第1 34の2 溶接ヒュームを含有する製剤その他の物。ただし、溶接ヒュームの含有率が重量の1%以下のものを除く。
特化則別表第3 62号 溶接ヒューム(これをその重量の1%を超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務

特化則の方には含有率について触れられています。マンガンの方に含有率が書かれるのはわかるのですが、溶接ヒュームについてはどのように考えればよいのか。
検討会の議事録を読み返しましたが、全く、ほんとにこれっぽっちも触れられていません。この定義がどこから出てきたのか不明です。
前の方に溶接ヒューム内のマンガンは2.56~2.77%と書きましたが、溶接ヒュームはすべて1%超えると判断するのか。そのことを明文化する必要があるのではないかと思います。

6月19日追記
特化則別表第1と3の「重量の1%」の部分ですが、厚生労働省関係者に確認しましたが、マンガンの含有量ではなく、溶接ヒュームそのもののことを指すそうです。まさしく書いてある通りでした。
「実際に溶接ヒュームという製品が出回るということはないと思いますが、、、」とも云っていました。
↑について追記(R3.2.9)
溶接ヒュームの取り扱いは、清掃や集じん機のダスト回収が該当するそうです。

特殊健康診断について(R3.2.9追記)

 「溶接ヒューム」は、上の図のように「マンガン又はその化合物」とは別の号になっていますので、健康診断は別物になります。
 溶接作業者は「溶接ヒューム」の健康診断をすればよく、「マンガン」についてはやる必要がありません。
 しかし、ステンレス(SUS300番台)の場合、ガス切断やグラインダー研磨を行う場合は「マンガン」としての健康診断をする必要があります。
 では、ステンレスを溶接し、そのあとグラインダーで研磨する場合はどうなるか。
 グラインダー研磨が溶接の一環である場合は、「溶接ヒューム」として個人サンプラーによる測定を行っているので「溶接ヒューム」のみやればよいと考えられます。ですが、溶接とは関係なく研磨を行う場合は「マンガン」として行う必要があるかもしれません。この件については私ではなく直接局に聞いたほうがよいと思います。(所轄県労働局の知り合いに聞いたところ、まだそこまで議論できていないそうです。)
 健診項目はほぼ同じですが、結果報告書は別になります。
 その料金ですが、別料金又はセット料金で結果報告書を分けて出す等健康診断機関によって色々なケースが考えられますので、お願いする健診機関と相談しましょう。

局所排気装置の点検表

局所排気装置は年に1回、定期的に点検することになっています。(定期自主検査 労働安全衛生法施行令第15条
実施者は、定期自主検査者の講習を受けた者が望ましいとされていますが、法的に必ず受けた者がやらないといけないわけではないですが、受けておいた方が実施する方としては安心できます。
この講習で指針に示された方法の説明がされますが、これをすべて実施するのは大変です。高所作業や機械的、電気的知識が必要な場合もありますので、できる範囲でよいと思います。できないところは、専門の業者に定期的に依頼することをお奨めします。

さて、では自分でどれだけできるか。ですが、例として下の表を作成しました。

局排点検表(フード別)
局排点検表(系統別)

今まで局所排気装置の定期自主検査をしてきた中で、①安全にできる箇所、②経験がなくても判定できる箇所、③一部チェックリスト化して後の対処がしやすいようにしています。あくまで例なので、これを参考に作成し直してもらえればと思います。

①安全にできる箇所
高所作業になる箇所は安全が確保できないところは、自分でやらないほうがよいでしょう。また、電気的知識は必要なところは感電するおそれがあるので注意しましょう。

②経験がなくても判定できる箇所
点検項目で「テストハンマーで叩いて判断する」があります。叩くことはだれでもできますが、それにより、堆積粉じんの有無やボルトの緩み、鋼板の腐食などの判断は困難です。ですのでこの表では省いています。

③一部チェックリスト化
排風機の点検の箇所は細かく作っています。
ここは電源がカットされていれば、一度やってみればできるところです。また、そこまでチェックできていれば、業者に依頼するにしても、見積もりされやすいと思います。

1枚目 フード毎に作成
風速計でフードの制御風速を測ります。
「新設時」をいれたのは、初期値からどれだけ劣化しているか一目でわかります。
「監督署届出日」というのは、局所排気装置を設置するにあたり、監督署長に届出をしないといけません。していないケースをよく見かけますので、この欄を作りました。

2枚目 ダクト、排風機、空気清浄装置の系統毎に作成
主ダクト、枝ダクト、目視検査時に枝ダクトに番号ふっておくとよいです。
系統図には、主ダクト、枝ダクト、排風機、空気清浄装置を描く他、ダンパー位置や点検口(孔)の場所も記載しましょう。
点検孔での測定値は別の紙に記入し、平均風速と静圧を記入するようにしています。測定値一つひとつ書くなら様式を変更してください。「状態」は点検口(孔)から目視で確認できるなら、内壁の状態など書くとよいでしょう。
排風機、空気清浄装置はよくあるトラブルを元にチェックリスト化してます。
点検口や横のパネルをボルトで開放する場合、パッキンが硬化していて再利用できない場合があるので、予備のパッキンを用意しておいてください。

あくまで例ですので、
みなさんの会社に合った表を作成してみてください。
表のエクセルデータの提供については、今のところ予定していません。

労災保険を利用した二次健康診断

労災保険・・・労働者災害補償保険制度の略
ちなみに、労働保険は、労災保険と雇用保険(失業保険の名称が変わり、雇用保険になりました)の総称です。

二次健康診断は、職場で行う定期健康診断等の結果、
(1)血圧検査
(2)血中脂質検査
(3)血糖検査
(4)腹囲の検査またはBMI(肥満度)の測定
以上の項目のすべてで異常の所見が認められた場合、労災保険を使って二次健康診断を受けることができます。ただし、すでに脳や心臓に疾患が見られる人は対象になりません。また、異常値でなくても、産業医が検査が必要と判断した場合は対象になります。
疾患が見られる場合は、治療が必要なので、労災保険ではなく健康保険で治療を行ってください。

じゃあ、この二次健康診断ってなに?
脳血管と心臓の状態を把握するために必要な検査で、具体的には、次の検査を行います。
(1)空腹時血中脂質検査
(2)空腹時血糖値検査
(3)ヘモグロビンA₁c検査
(4)負荷心電図検査または胸部超音波検査(心エコー検査)のいずれか一方の検査
(5)頸部超音波検査(頸部エコー検査)
(6)微量アルブミン尿検査
これに係る費用がこの労災保険から給付されます。

職場で健康診断を受けて、受けっぱなしではなく、そのまま通常勤務してよいかを判断しなければなりません。
健康診断の個人票に医師の名前と判子が押してありますが、これは安衛則第51条の2の、医師等からの意見聴取に該当しません。現場のことを把握している産業医に判断してもらい、その結果を個人票に記入しましょう。
産業医がいない労働者50人未満の事業場は、産業保健総合支援センターにご相談ください(原則無料)。

昔、健康診断にかかわる仕事をしていたとき、受診した事業場で労災二次健診に該当する人のリストを持って、その事業場担当者に受診勧奨してましたが、

「労災保険使うと、次から掛け金高くなるから使わない」

とよく云われました。
この二次健診に係る給付は、労災保険料額の増減に係るメリット制の対象にならないので、使ったからといって、掛け金があがることはありませんので、利用して、労働者の脳血管、心臓疾患の防止にお役立てください。(令和2年4月に労働局に再確認済み)

吸収缶の繰り返し使用

衛生管理者、有機溶剤作業主任者等、防毒マスクの知識がある方向けの記事です。使用限度を保証するものではありませんので、データを過信せず、早期の交換に心がけてください。

気中有機溶剤濃度が低い作業場で使用している防毒マスクは、繰り返し使用しているのが現状だと思います。
作業場の気中濃度が数ppmで極めて低いという背景もあると思いますが、メーカーでは、破過曲線図の右端の使用時間を超えての使用を推奨していません。
作業強度による呼吸数の増減や瞬間的に高濃度に晒されている可能性、温度、湿度、その他反応ガスなどの様々な要因からです。

では、1週間前に使って、密閉容器などで適切に保管した防毒マスクは使ってよいかどうか。

マスクメーカーである興研さんが発行している「Safety NEWS(2017.7 №702)」にあった記事を紹介します。
(残念ながら、メーカーhpにPDFで保管されていませんでした。お申し出頂きましたら、記事は消去いたします。)

吸収缶に有機溶剤蒸気が吸着するとどのようになるか。

左の図のように、吸収缶の上流(入り口)側に吸着します。これが呼吸によって吸着した有機溶剤の分子が下流側の粒に移っていきます。
この粒にどれだけの時間保持できるかは有機溶剤の種類によって異なります。メタノールとかは極めて早いです。
使わなくても置いておくだけで、右の図のように有機溶剤の分子は拡散していきます。

このグラフは、試験濃度300ppm、使用限度とする破過基準濃度5ppmのガスによるデータです。
100分まで使える吸収缶で、50分使用した後、1日、5日、10日、15日保管した場合の抜けてしまう濃度をプロットしています。
1日、5日保管ならば、同一吸収缶を繰り返し使用しても、100分使用しても破過基準濃度に達していませんので、繰り返し使用に耐えうると判断できます。
一方、10日のものは再使用開始後20時間で、15日のものは既に 破過基準濃度 に達していますので、再使用はできません。

以上より、吸収缶の袋を開けてしまったら、未使用であっても5日に処分するよう心がけてください。

Safety NEWS(2017.7 №702)の一部

労働基準法施行規則第18条第9号の有害な業務

労働時間の延長が2時間を超えてはならない業務として次の業務が挙げられています。

1.多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
2.多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
3.ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
4.土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
5.異常気圧下における業務
6.削岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
7.重量物の取扱い等重激な業務
8.ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
9.鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準じる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務
10.前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務

この労働時間の延長のほか、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任としなければならない、または衛生工学衛生管理者から衛生管理者を選任しなければいけない業務にも該当します。
この業務のうち、9号について詳しく説明します。

9号の具体的な解釈として、
鉛中毒予防規則第1条第5号の鉛業務 四アルキル鉛も含む
クロムメッキに係る業務
有機溶剤中毒予防規則に係る業務
地下駐車場内における業務   があります。

労基則18条解説(労働基準法(上)労務行政研究所発行)

(労働基準法(上)労務行政研究所発行)

この通達(昭和43年7月24日 基発第472号、昭和46年3月18日 基発第223号)が見当たらないことと、この書籍が絶版なので、これ以上のことはわかりません。
この解釈では、特定化学物質については特に述べられていませんが、有機溶剤中毒予防規則の業務はそのまま準用されていますので、同様に特化物も同じ扱いにしておいたほうがよさそうです。